どれほど科学技術が進歩し、医学や科学が発展しても、すべての苦しみを解決することは難しいです。
しかし、人は苦しみを抱えながらも、穏やかに過ごせる可能性は残されています。ターミナルケアにおいて、1つ理解しておきたいことが認識です。同じものや出来事をみても、ある人はうれしく思い、ある人は悲しく思うこともあります。
例えば、応援しているチームが勝つと嬉しいですが、負けると悲しいというのが一般的です。ところが、応援しているチームが異なれば、同じ結果でも悲しく思う人も、うれしく思う人もいます。
一般的に、死は忌み嫌われ、避けるべき負の出来事です。悲しく、苦しく、誰もが絶望的に思える出来事でもあります。ところが、目の前に死が避けられない状況でも、幸せである、穏やかであると感じる人もいるのです。
なぜ、同じ死を目の前にしても穏やかだと思えるのか、それは支えがある人とない人の違いであることが多くあります。人は、たとえこれ以上苦しいことはないという状況であっても、苦しむ前には気づかなかった自らを支えてくれている大切なものに気づくと、穏やか、幸せと感じることができます。これは、決して一部の人だけの話ではなく、多くの人が持つ可能性です。
支えには、大きく分けて3つあり、将来の夢、支えとなる関係、そして選ぶことができる自由です。支えの探し方は簡単で、どんな時に穏やかになれるのかを考えてみるのです。本人や家族に尋ねて語ってもらうだけでなく、患者がどんな時に穏やかな表情をするのか、看護師が観察したり、看護師同士で話し合うことも重要です。